クロロホルムの本当の効果と危険すぎるリスク…

クロロホルムの真実を追求

クロロホルムの本当の効果をご存知でしょうか?クロロホルムを吸引すると、ドラマなどでは、すぐに気絶して眠ってしまうシーンが印象的ですが、その効果は本当なのかどうか、クロロホルムの真実について追及していきます。

クロロホルムの本当の効果と危険すぎるリスク…

クロロホルムの睡眠効果については、多くの方が認識するところですが、一瞬にして眠ってしまうことはなく、クロロホルムを利用するには、危険すぎるリスクが存在しています。クロロホルムの効果や毒性について、詳しく見ていきましょう。

クロロホルムについての基礎知識

クロロホルムの歴史

新石器時代の遺跡から、穿頭術が行われた人骨が多数発見されており、人類の外科手術の歴史は非常に古く、メソポタミアや古代インドにおいても、結石の除去や鼻の整形など、高度な手術が行われていたと言われています。しかし、当時は麻酔薬が存在しなかったため、かなりの苦痛を伴う手術であったようです。

 

1831年ドイツの化学者ユストゥス・フォン・リービッヒ、フランスの科学者ウジェーヌ・ソーベイラン 、サミュエル・ガスリーの3名がそれぞれ独立に、クロロホルムを発見しました。そして、1847年 イギリスの医師ジェームズ・シンプソンによって、クロロホルムの臨床応用がエジンバラにて開始されました。

 

それまでは、亜酸化窒素やエーテルを用いた麻酔手術が行われるようになっていましたが、引火性や気管支への負担などの欠点があったため、クロロホルムが代用されることになり、麻酔薬としてヨーロッパで急速に広まっていきました。

クロロホルムの副作用

クロロホルムは、長らく外科手術の吸入用麻酔剤として使用されていましたが、深刻な心不整脈などの原因になりやすいという特徴があり、「中毒者の突然死」と表現されたほどで、20世紀の初頭になると、麻酔剤としての主力はジエチルエーテルへと移行していきました。

クロロホルムの睡眠への効果

睡眠薬としての効果はあるのだろうか

クロロホルムを睡眠薬として使えば、すぐに眠れると思っている方が多いようですが、現在では危険度が高く、睡眠薬としての使用はされていません。クロロホルムを多少吸引しても気を失うことはなく、咳や吐き気、頭痛などに襲われる程度のようです。

睡眠に至るにはどれくらいの量が必要?

クロロホルムに麻酔性があることは事実ですが、発現させるためにはクロロホルムを気化させてから、相当量を吸引させなければならないため、過度な吸引によって、腎不全を引き起こし、死に至る可能性が高くなります。

 

クロロホルムを睡眠薬として、現在では使用されていませんが、クロロホルムを麻酔として使い睡眠効果を得るためには、「吸入マスク又はガーゼを鼻腔前に置き、30滴(0.6mL)が標準の使用量」とされています。

効果を発するまでの時間

瞬時には気絶しないらしい…

クロロホルムは、ドラマの中でもよく利用されていました。ハンカチに数滴クロロホルムを染み込ませて、後ろから口元に押し付けると、数秒で意識を失うというシーンを見た方も多いと思います。しかし、クロロホルムを嗅いで一瞬で気絶することは絶対にないそうです。

意識を失うまでには5分以上も?!

クロロホルムを使って意識を失うまでには、大量に染み込ませたハンカチなどを口に当て、ゆっくり大きく何度も深呼吸をして、5分間くらいは続けないと、通常は気絶しないそうです。また、クロロホルムが肌に触れると、状況によってはただれを引き起こし、消えない傷として残ることもあるようです。

クロロホルムの麻酔効果

全身麻酔にも使っていた

イギリスの産婦人科医ジェームス・シンプソンによって、1847年にクロロホルムが全身麻酔薬として取り入れられ、無痛分娩に成功しました。クロロホルムは香りがよく、気管や気管支を刺激することが少ないため、その後、急速に広まっていきました。

麻酔効果を発揮する濃度

クロロホルムの作用

(使用単位 ppm

30      臭気が感知できる。しかし、すぐに臭覚が麻挿する。

100      不快感や不安感が起こる。

1000      5~10分間のばく露で、めまい、吐き気をもよおし、頭痛、疲労が残る。

4000~5000     脈はくが早くなる。嘔吐、思考混乱などが起こる。

14000~16000      麻酔性を発揮する危険濃度。

ヴィクトリア女王も使用していた

1853年及び1857年、ジョン・スノウ が、ヴィクトリア女王にクロロホルムによる麻酔を使った無痛分娩を行いました。無痛分娩については、当初、教会などから批判も受けましたが、ヴィクトリア女王が2人の子供を、クロロホルムによる麻酔で出産したことで、その後は社会的にも受け入れられていきました。

クロロホルムの麻酔使用のリスク

クロロホルムによる中枢神経の抑制

クロロホルムによる中枢神経抑制として、皮膚・粘膜の刺激、肝・腎尿細管・心臓に対して細胞毒となる作用があります。また、循環器系に対する抑制作用が強く、血圧下降や突然の心停止を起こす危険があり、他にも肝障害や腎障害を起こす可能性があるため、現在では臨床に用いられていません。

過剰な投与は非常に危険!!

クロロホルムを大量に吸入すると血圧や呼吸、心拍の低下を引き起こし、重篤な場合は死に至ります。また、呼吸器や肝臓、腎臓に影響を与えることが確認されており、発がん性も疑われています。

麻酔使用には毒性が強かった

クロロホルムは麻酔覚醒後、頭痛、めまい、倦怠、悪心、嘔吐等の症状を起こすことがあり、稀に死亡、黄疸、高度貧血、肺炎、気管支肺炎、虚脱を起こすことがあります。

また、ラットを用いた実験では、胎児毒性、発達毒性が見られたことが報告されています。

クロロホルムの脱脂効果

病理検査と脱脂処理

病理検査の標本作製工程は、「切り出し→固定→脱灰→脱水(脱脂)→脱アルコール→

パラフィン浸透→パラフィン包埋」の順序で行われていますが、病理検査は、検体採取から診断報告までに、約1週間もの時間がかかってしまいます。

 

時間を要する理由は、検査に必要となる標本作製の工程にあります。検体を顕微鏡で観察するためには、かなり薄くしなければならないのですが、性質上刃物を使うことができないため、検体をパラフィンで固める作業が必要となります。そのため、作業工程に時間がかかってしまうのですが、そのうちの脱脂処理にクロロホルムが活用されています。

脱脂処理の必要性

病理検査で使用する検体となる組織片は、最終的にパラフィンで包埋して、薄切の標本にするのですが、このパラフィンは水には溶けないという性質があるため、アルコールによって組織片に含まれる水分を取り除く必要があります。

 

また、細胞内の脂肪に包まれた水分を除去するために、脂肪分も取り除く必要があり、一般にはアルコール類が広く使用されているのですが、クロロホルムは脱脂力が強いため、クロロホルムとエタノールを1対1で混合した薬液などが利用されています。

クロロホルムはリスクが大きかった…正しい知識を得ておこう

クロロホルムは中枢神経に作用し、麻酔剤として利用されてきた歴史がありますが、ドラマの中のように、クロロホルムを使えば簡単に眠らせることができるというのは、間違った認識です。
現在では、クロロホルムは溶媒として広く用いられていますが、使用するのはかなりのリスクが伴いますので、正しい知識を得て、間違った理解をしないように注意しましょう。